「合唱指揮 第3巻 イントネーション」(ハンガリー語タイトル “Karvezetés III. Intonálás”)と題されたカルドシュ・パールの著作は、1970年に教科書出版社より初版され、今日でもハンガリー語で著されたユニークかつ基礎的な音楽文献である。改訂版は、カルドシュ・パール基金より2017年に出版された。
実践に役立つ多くの譜例に加え、音響の科学的背景に関心を持つ人には詳細な理論面からの分析をも提供する。質の高い合唱の響きを求める音楽教師や合唱指揮者に、この本を推奨する。
この度、2022年7月に日本語版がカワイ出版から発行された。伊藤直美訳、松下耕監修によるこの本の日本版タイトルは、『合唱における純正なイントネーション ~指導のためのアドバイス~』である。理解をより易しくするため、5つの章から成る原書の第Ⅳ章を補遺などに移行した。また、曲例はハンガリーのわらべうたを減らし、英語圏のわらべうたも英語版から引用した。
カルドシュ・パール基金のホームページ(kardospalalapitvany.hu)にある音源は、音響に関するカルドシュの考えを聴覚で把握するための貴重な手助けとなる。40年以上前にカルドシュ・パールの指揮で録音されたコダーイ作曲「ファンシー」は、ケチケメートのコダーイ小学校の110名から成る合唱団によって歌われており、純正な響きを聴感で捉えることのできる音源である。
*訳は日本語版p.30を参照してください
コダーイ・ゾルターン『ファンシー』
指揮:カルドシュ・パール
1977年の録音